【解説】ギターシンセ・ベースシンセの仕組みについて(BOSS SYB-5を例に)

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ベースに使ったエフェクターについてレビューを書き散らかしているこのブログですが、ギターシンセ関連についても書こうとしたところ、前提となる説明がかなりの長文になってしまいました。
ギターシンセに関して詳しく書かれたサイトやブログは、多くの場合肝心の超基礎的な部分が抜けているものも多いように感じたので、今回はそのあたりについて色々と書いてみようと思います。
※なお、分かりやすさを最重視するため一部かなり簡略化した表現があることをご了承ください。

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ギターシンセとは?

そもそも、「ギターシンセ」とは一体どういう機械なのか?
ギターではなくベースにこの機械を繋いだ場合は「ベースシンセ」とも呼べますし、その一方で「シンセサイザーで演奏した低音部のベースパート」を「シンセベース」と呼んだりすることもあり、そのあたりの単語を混同している人も見かけます。

ざっくり言うと、「ギターシンセ(ベースシンセ)」とは「ギター(ベース)からの音声信号がスイッチになってシンセの音を鳴らす機械」のことです。
意味が分からないですね。
このあたりの説明のために、まず「シンセ(シンセサイザー)とは何か?」という話からしたいと思います。

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シンセサイザーの仕組み

一般的に「シンセ」というと、「キーボード」と同じ意味で使われていることも多いです。
厳密にはそうではないんですが、ひとまずは「シンセ=キーボード」のイメージで大丈夫です。

さて、最大のポイントとして、キーボード(シンセ)は本物のピアノのように「鍵盤を押すと内部のハンマーが動き、弦を叩くことで音が鳴る」ような楽器ではありません。
キーボード(シンセ)という楽器は、「鍵盤を押すと電気信号が内部でピピッと走り、内蔵された色々な種類の音から特定の音を探し出して、その音がスピーカーから出てくる」というものです。
ものすごく当たり前ですが、これがとても重要な点です。

キーボード(シンセ)から出てくる色々な音色は、ギターのエフェクターのように「実際に鳴っている音をピックアップで拾い、その音声信号を加工することで色々な音が出せる」のではなく、「最初から色々な種類の音が内蔵されている」。
そして、その内蔵された音を、鍵盤というスイッチを押して呼び出すのです。

キーボード以外の形状のシンセサイザー

さっき「シンセ=キーボードという理解でよい」と書いたばかりですが、シンセはキーボードの形をしたものだけではありません。
エレクトリックドラム(電子ドラム)もシンセの一種です。

エレドラのあのリアルな音は、当然ながら、ゴムやメッシュのパッドを叩いた実際の音をエフェクターのような仕組みで加工しているのではありません。
センサーが内蔵されたパッドを叩くと、その振動がスイッチになって、様々な音色を内蔵した音源モジュールからスネアやシンバルの音を呼び出し、その音がスピーカーから鳴っているわけです。
ここまでは「分かっとるわそんなもん」と思われるかもしれませんが、これを理解しているギタリスト・ベーシストでも、ギターシンセ・ベースシンセについては勘違いしている人が意外といます。

「トリガー」

さて、ここでひとつ用語を覚えてください。
「鍵盤を押す」や「パッドを叩く」といった、これらのスイッチとなる動作によって特定の音が鳴ることを、シンセにおいては「トリガー(trigger…引き金、きっかけ)」と呼びます。

ドラムについて詳しい人なら「トリガー」という単語には馴染みがあるかもしれませんね。
メタル系の音楽でよく使われる、バスドラムの音にバチバチというアタック音を人工的に加える手法を「トリガー」と呼びますが、これはバスドラムに振動を検知するセンサー(これの名称も「トリガー」)を取り付けて、バスドラムを踏んだときの振動を電気信号に変換し、その信号がトリガーとなって、音源モジュールに内蔵されている「バチッ!」という音をスピーカーから鳴らしているわけです。
(この「生ドラムとエレドラを組み合わせた仕組み」をさらに大掛かりに進化させたものもあり、Rolandは「ハイブリッドドラム」と呼んでいたりします)

そして、ここまで説明してきたシンセの仕組みは、ギターシンセ・ベースシンセも同じです。
ではここで、ベースシンセとしては最も手に入りやすいであろう、私もかつて所有していたBOSSのSYB-5 Bass Synthesizerのオフィシャル動画を見てみましょう。

演奏の冒頭からミョンミョンいっているこの音、これがシールドケーブルを経由してSYB-5に入力されたベースからの音声信号をトリガーに、内蔵されたシンセの音が鳴っている「ベースシンセの音」です。
ドライ音を混ぜることもできますが、基本的にはこのミョンミョンサウンドはベースの音を加工したものでは全くないわけです。

これに対し、0:32~1:11の演奏で鳴っている音はシンセの音ではありません。
SYB-5の全11モードのうち、MODE10と11はあくまでベースの音を加工してシンセっぽい音にするシンセ風のエフェクターであり、SYB-5は「ベースシンセとベースシンセ風エフェクター、両方の機能を備えた2in1デバイス」とでも言うべきものなのです。
(※最近はあまり見ませんが、Ibanezがかつて販売していたSB7 SYNTHESIZER BASSのように、「ベースシンセ風エフェクター」の機能だけを備えた製品もあります。)

ギターシンセ・ベースシンセのデメリット

低音域を正確に検出できない

先ほどのSYB-5の動画で「ベースシンセ」の音を出している部分(冒頭から0:31までと、1:12から最後まで)のうち、特に最初のパートではベースの低音域を使わず、主にハイポジションで演奏しているのが分かるかと思います。
これには弦楽器特有の問題が関係しています。

そもそもシンセには、「トリガーから実際に音が出るまでにタイムラグが生じる」という問題がついて回ります。
これを「レイテンシー(latency:遅延、ここでは「発音の遅れ」を意味する)」といいます。

例えばキーボードで「ド」の鍵盤を押し、電気信号がピピッと走ります。
すると、内部で「これはドの鍵盤を押したときの電気信号だ!」と認識し、内蔵音源の中から「ド」の音を呼び出して、スピーカーから「ド」の音が鳴ります。
この過程でレイテンシーが発生するのです。

キーボード型のシンセでは、技術の発展によりこのような問題はほぼ解消されています。
しかし、ギターシンセ・ベースシンセの場合、問題がさらに複雑です。

鍵盤を押すことによるトリガーなら、「低いラ(A0)の音」、「高いミ(E7)の音」等、それぞれ異なる鍵盤を押すことで当然別々の電気信号が送られるので、識別は簡単です。
ところが、実際に弦を鳴らして出した音声信号がトリガーとなるギターシンセ・ベースシンセにおいて、音程感が乏しい低音域では「内蔵音源のどの音程を鳴らせばいいか」を判別するのが大変です。
なので、例えばベースにSYB-5をつないでE弦開放の音を弾くと、上手く検出できずに半音上のFが鳴って音程がふらついたり、オクターブ上のEが鳴ったりしてしまうわけです。

このような事態を防ぐために、ギターシンセ・ベースシンセを演奏するうえでは「なるべく低い音を使わない」という工夫が必要になります。
高音域で演奏することで、音程の誤検出や極端なレイテンシーの発生を防ぐのです。
ベースシンセから実際に出てくる音は「トリガーとなる音のオクターブ下」に設定されている場合も多いので、ハイポジションで弾いても「ベース」としての役割を果たすことができます。

和音が演奏できない

機種にもよりますが、ギターシンセ・ベースシンセは基本的に和音を検出することもできません。
初期のキーボード型シンセサイザーは、処理能力の関係上、和音を鳴らすことができず、単音しか発声できませんでした(モノフォニックシンセサイザー)。
鍵盤を複数押さえても、ひとつの音しか鳴らなかったのです。

電子技術の発達により、キーボード型のシンセで複数の音を同時に鳴らせるもの(ポリフォニックシンセサイザー)が登場したのは、1970年代のことのようです。
「ド」と「ソ」の鍵盤を同時に押すと「ド」「ソ」2系統の電気信号がそれぞれピピッと走り、それぞれの電気信号を内部で認識、「ド」と「ソ」の音を呼び出す→スピーカーから「ド」と「ソ」の音が両方鳴る…というのは今でこそ当たり前ですが、この和音検出もギターシンセ・ベースシンセでは簡単ではありません。
問題は、弦楽器で和音を弾くと、その音声信号が一緒になってシールドの中を通るという点です。

例として、SYB-5に繋いだベースでCとGの和音を鳴らすとしましょう。
1つのピックアップで拾われたCとGの音声信号は、まとめて1本のシールドを通ってゴチャッとSYB-5の中に入るため、SYB-5は「こ、これは何の音だ?見当もつかない!うわああああ!!!」とパニックに陥り、結果としてアンプからはブツブツ変なノイズが出たり、全然違う音が鳴ったりするということが起こってしまうわけです。
鳴らしたい弦と違う弦が少し振動するだけでも音程の誤検出の原因となるため、音を出さない弦は確実にミュートしなければいけません。

問題の解決策

これらの問題を避けてシンセのような音を出したいなら、「シンセ風エフェクト」の機能を使ったり、歪み系エフェクターとエンヴェロープフィルターを組み合わせてそれっぽい音を作る、という方法があります。
これならばスラップや速弾き等の奏法にも対応してくれるので、奏法を選ばずシンセっぽい音を出すことができます。

【まとめ】ベースシンセっぽい音が出るエフェクター、組み合わせ
これまで色々とエフェクターを使ってきた中で、私は一時期いわゆる「ベースシンセ」を愛用していました。 しかし、弦楽器によるシンセ音源操作につきもののレイテンシーや、別物の楽器を弾いているような感覚に慣れず、その後ベースシンセではなく「ベース...

しかし、「本物のシンセの音」をギター・ベースで出したいなら、シンセ特有の問題点はある程度受け入れざるをえない、と言っていいでしょう。
機種ごとに処理能力にばらつきがあるとはいえ、ネットでベースシンセのレビュー等を見ていると、このあたりの理解がないまま購入してしまったのでは?と思われるものが時々あります。

基本的にギターシンセ・ベースシンセというものは、誤作動を起こさないよう、例えるなら反応の悪いチューナーでチューニングを合わせるときのように、丁寧かつ慎重に音を送り込む必要がある機材です。
この前提を踏まえれば、SYB-5は値段以上の価値がある優秀なベースシンセだと思いますので、ネット上の評判を鵜呑みにせず実際に試してみていただきたいと思います。

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なお、RolandのGKピックアップを用いた本格的なギターシンセであれば、上記の制約はかなり解消され、和音での演奏も可能です。
これについては別記事で書きましたので、興味のある方はご覧ください。

【解説】ギターシンセ用GKピックアップの仕組みについて
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