以前からNeotenic SoundのDyna Forceというプリアンプが気になっていたのですが、いつも使っているスタジオにレンタル機材として置いてあることに最近になって気付きました。
そこで先日ドラマーと2人でスタジオに入った際、実際に大音量で2時間ほど使ってみたところ、これが非常に興味深いものでした。
実際に購入したわけではないものの、ネット上にレビューがあまり見当たらないので、個人的な備忘を兼ねて感想を書き残しておこうと思います。※買っちゃいました。記事最後に購入後レビューのリンクあり。
DynaForceの概要
NeotenicSoundは、大阪南船場に工房を構える「えふぇくたぁ工房(EFFECTORNICS ENGINEERING)」によるエフェクターブランドです。
かつて存在した「HaTeNa?」もこのえふぇくたぁ工房のブランドでした。
取扱店が少ないので試奏が難しいですし、セール価格になることも原則ないのでなかなか購入しにくいため、こうして実機に触れる機会があったのはラッキーでした。
→取扱店舗・スタジオ(オフィシャルサイト)
今回試してみたDynaForceは、ベース用のプリアンプです。
同じNeotenicSoundのMagicalForceというイコライザー系のエフェクターに機能を追加した、上位機種ともいえる製品です。
DIに信号が入力される前の段階で、客席に届く外音をしっかり作りこむというコンセプトのようです。
フットスイッチはエフェクトのON/OFFではなく、ONとミュートの切り替え(チューナーアウトがあるのでミュート時は音を出さずにチューニング可能)となっています。
LEDが赤く点灯しているときがエフェクトON、緑のときがミュートです。
以下、オフィシャルの説明文を参照しつつ、使用感について書いていきます。
コントロールの特徴
コントロールは、左から順番にLevel、Punch、Body、Wood、Edge、Densityという6つのノブ。
Levelが音量です。各コントロールのセッティングにもよりますが、9時ぐらいの位置で十分なボリュームが出ますので、かなり出力ゲインを上げることができるようです。
(当然アンプ側の仕様にもよりますが、アンプのリターンに挿してパワーアンプを駆動することも可能だそうです)
Punchは「音圧感」の調整とのことで、反時計回りに絞りきった状態が±0のフラット。
時計回りに回すと低音域がブーストされるのですが、バンド内の低音が飽和する原因になるような超低域には作用しない様子で、上げても音がボワつくことがなく、確かに「音圧」とよく言われるような部分をピンポイントで押し出すことができます。
カット方向には調整できません。
Bodyは「音の重心」、存在感の調整。
これも絞りきった状態でフラット、カット方向の調整はできません。
しっかりボトムを支えるベースらしい音を維持しながらも、音が散っている状態を解消するというコントロールです。
音に明瞭な存在感を与えるためにはローカットやトレブルブーストといった手段がありますが、重心が上がってしまい、ベースらしさが損なわれます。
Bodyはそのようなイコライジングとは異なり、触ってみた感じはローミッドあたりのブーストに近い雰囲気なのですが、ミッドブーストによって起こりがちな癖のある音質変化がなく、扱いやすく存在感を増してくれます。
Woodは「芯の定位」の調整。
こちらは12時の位置がフラットで、反時計回りでカット方向に調整することもできます。
「DIを通してラインで出した際の独特のドライな距離感を補う」という説明がなされています。
「ベースのボディの木の鳴りの部分をしっかりと前に出す、あるいはジャンルによっては逆に質感を抑える」とのことで、これは実際に触ってみるまで本当に意味が分からなかったんですが、個人的には「エレキベースっぽさ」をつかさどる周波数帯のイコライジングのように感じました。
上げるとロック系の編成で必要な音抜けを確保できますし、下げればジャズ等のアコースティック系アンサンブルでエレベを使うときにありがちな「いかにもエレキ楽器臭い妙な存在感を薄めたい」という状況にもぴったりだと思います。
Edgeは「輪郭」の調整。12時の位置でフラット。
これはトレブルのイコライジングのようでしたが、カットしたときの変化はなめらかで、ブーストしたときにはスラップ系のバチバチいう帯域を強調するのではなく、指弾きのアタック感が上手く映えるように音を明るくしてくれる印象。
確かに「輪郭をはっきりさせる」という表現がぴったりで、何より音程が非常に取りやすくなります。
そして最後がDensity、「密度」の調整。
反時計回りに絞りきった状態がフラットになります。
「上げると音の密度が高まり、アバレの帯域が落ち着きながら音が真ん中に集まってくる」とのことなのですが、これが本当に不思議でした。
感覚としてはコンプレッサー的なものなのですが、一般的なコンプの「スレッショルドの値を超えたレベルの信号だけが圧縮されている」という弾き心地ではなく、聴感上、全ての音がぎゅっと収束するような、画像加工でいうシャープネスを上げるような独特の変化が感じられるのです。
音のボワつきがなくなり、自分が出している音が聴き取りやすくなるので、結果的に演奏するのがとても楽になります。
個人的には「つまみを動かしたら何がどう変わるのかが分かりにくいエフェクター」というのはあんまり好きではないのですが、Punch~Edgeの各コントロールは単純に4バンドイコライザー的なとらえ方でも使えそうです。
なんせ専門知識がないので中身のことは分かりませんが、各コントロールにおいて、絶妙な周波数をそれぞれ異なる最適なQ幅で調整できるようにしているのでしょうか?
一部パラメーターがブーストしかできない仕様になっている点など、設計上のこだわりが強く感じられます。
使ってみた感想
音を出しながら色々いじっていたところ、このようなマシマシのセッティングになってしまいました。
で、「うーん、これ実際どうなんだろう?そこまで効果あるかなあ」と思いながら一旦すべてのつまみをフラット位置に戻して元々の音を出してみたら、自分のベースの素の音の薄っぺらさにびっくりしました。
パッシブのフレットレス7弦ベースを使っていることもあり、各弦の音圧感はバラバラ、ピッチは取りづらく、いくら音量を上げてもドラムに負けてしまう状態。
そういえばいつもこんな音だったわ。
アンプのセッティングでDynaForceを通したときのような音に近づけようにも全く再現できず、たまらずさっきまでの盛りまくったセッティングに戻してしまいました。
そこで「うわ、よく分からんけどこのプリアンプすげえな」と感じた次第です。
スマホで適当に録画していた練習風景をあとから見ても、Dyna Forceを通すことで明らかに聴き取りやすい音になっているのは驚きでした。
総評として、これは語弊があるかもしれませんが、クリーンな音なのに歪ませているときのように楽に弾けると感じました。
というところを踏まえてこちらのオフィシャル動画をご覧いただければと思います。
(こちらはショートバージョンですが、ロングバージョンのYouTube動画もあります。)
ヘッドホンで聴いてもそこまで凄いものとは感じられないかもしれませんが、実際に爆音で体感してみると本当に凄かったです。
このブログの過去記事をお読みいただいている方はご存知かもしれませんが、私は基本的にはガッツリ音が変わるエフェクターが好きで、いわゆる「音質補正系」みたいなエフェクターにお金をかけるのは正直あまり趣味ではありません。
それでも今、この文章を書きながら「さすがに高すぎるよなあ、フットスイッチでバイパスできないのも好きじゃないし、いやでもやっぱり欲しいなあ、うーん」と悩んでしまっています。
それぐらい好感触でした。
BodyとWood以外のコントロールはもう少し安いMagical Forceと共通なので、そちらを狙ってもいいかもしれません(※たまに中古で見かける3ノブの旧バージョンにはDensityのノブがないので注意)。
また、Density機能だけの1ノブエフェクターで「Density」という機種もあります。
NeotenicSoundの製品を取り扱っている大手楽器店は大阪心斎橋のイケベプレミアムベースぐらいですが、こちらは楽天市場に出店しているので、楽天ポイントを貯めている方は楽天経由で購入するのもありでしょう。
たまに中古で出ても大概すぐに売れてしまうので、気になる方は定期的にチェックすることをおすすめします。
【追記】DENSITY機能を抜き出した単体機「DENSITY」を購入してみました。

【さらに追記】ついにDynaForce買っちゃいました。

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