【ベース弦】「フレットレスにはフラットワウンド」という誤解

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私は現在ベースをフレットレスの1本しか持っていないのですが、先日身近なところで「フレットレスベースにはどんな弦を張っているか?」という話題が出ました。
フレットレスベースにラウンドワウンドの弦を張っているベーシストは多いですし、私自身もラウンド派なのですが、「フレットレスベースといえばフラットワウンド弦」というイメージを持っている人もよく見かけます。
今回はそのへんの話とともに、エレキベース用の弦についてまとめてみたいと思います。

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ベース弦の種類

とりあえず前提として、よく言われる弦の種類についてざっくり説明してみます。
ベースの弦は細い金属の線からできており、「芯線」に「巻線」をぐるぐると巻きつけた構造になっています。
※この図は簡略化しています。

・ラウンドワウンド(round wound)

断面が丸い巻線を使用した、最も一般的な弦がラウンドワウンド弦です。
表面に凹凸がある、いわゆる「普通の弦」ですね。

・フラットワウンド(flat wound)

リボン状の平たい巻線を巻きつけることで、表面がツルツルしているのがフラットワウンド弦です。
コントラバスの弦と同じような感触で、弾いていてかなり硬く、独特の引っ掛かりがあります。
ラウンドワウンドと比較すると、「アタックが抑えられた落ち着いた音」と感じる人が多いです。

・その他、ハーフラウンド/セミフラット等と呼ばれるもの

ラウンド弦の表面を削る、または圧力をかけて凸凹を押しつぶすといった方法により、ラウンド弦とフラット弦の中間の音色・質感を狙った弦もあります。
メーカーによって呼び名が異なりますが、「ハーフラウンド」とか「ハーフワウンド」、「セミフラットワウンド」等と呼ばれます。

削ったものとしては、ダダリオのHalf Roundsや、Ken SmithのSlick Round、そしてghsのBrite Flats等。
押しつぶしたものとして、SIT STRINGSのSEMI-FLATや、ROTOSOUNDのSolo Bass(巻線を芯線に巻きながら潰す?)、Ken SmithのCompressor(芯線に巻きつける前の段階で巻線を圧縮)等があるようです。

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フラットワウンド弦の特徴

そもそも、ベースのフラット弦はラウンド弦より古くから存在しており、エレキベース黎明期の1960年代~70年代初頭にかけて広く使われていました。
当時のレコーディング技術の問題を差し引いて考える必要はありますが、実際モータウンやビートルズのサウンドからイメージされるような、昔ながらのまさに「ボンボン」という感じの音色です。

(まあ中にはスティーヴ・ハリスみたいな人もいますが。)

フラット弦の欠点として、弦のテンションが高いものが多く、ネックに順反り方向の強い負荷がかかります。
また、表面が平らなために摩擦が非常に強く、これは実際使ってみないと勘違いしがちですが、慣れないうちはちょっとスライドやグリスをしただけで弦を押さえる指先がやけどするほど熱くなります。
フラット弦に独特の魅力があるのは事実ですが、現代的な演奏にはあまり向かないので、基本的にヴィンテージ寄りの音色を得たいためにあえて選ぶものだと私は捉えています。

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「フレットレスといえばフラット弦」という迷信

では、どうして「フレットレス+フラット弦」という組み合わせが定番ぶっているのでしょうか?

これはおそらくですが、「金属製の弦が木製の指板に直接当たるフレットレスでは、ラウンドワウンド弦だと指板が削れてしまうのではないか?弦の表面が平らなフラットワウンドの方がいいはずだ!」という程度の話だろうと思います。
楽器店に置いているフレットレスベースにフラットワウンドが張ってある場合が多いのも、そのあたりのクレーム対策という側面があるかもしれません。

また、フレットレスベースに対する「アコースティック風の音がする」という誤解が発端となり、「それならコントラバスの弦と同じ構造のフラットワウンド弦がぴったりだろう」という考えを招いた可能性もありそうです。
(※フレットレスのエレキベース自体は特段アコースティックアンサンブル向けの音ではない!)

出したい音が出せる弦を張ろう

しかし、そもそもフレットレスベースの第一人者であるジャコ・パストリアスは、フラット弦ではなくROTOSOUNDのステンレス製ラウンド弦を使用していました。
となると、「フレットレスにはステンレスのラウンド弦こそが王道」とも言えてしまいます。

また、私がこのブログで紹介したエクストリームメタルでフレットレスベースを用いるベーシストたちも、調べた限りではラウンド弦の使用者が多数派です。
もちろん、色々試した結果としてフレットレスにフラットワウンド弦を張っているベーシストも多いのでしょうが、「フレットレスには絶対フラット弦!」というのはどうも先入観による思い込みという要素が強そうです。

しかし演奏者としては、やはり弦のチョイスは音の好みで決めるべきだと思います。
ぶっちゃけめったにフレットレスを使わないような人が機材ブログとかで「やっぱりフレットレスといえばフラット弦だよねー!」とか書いてるの、アレが勘違いを助長してると思う。

それでもやはり指板のダメージが心配な方はいるでしょう。
確かに、指板材は硬質とはいえ、木材ですから弦の跡はつきますし、長期間弾いているうちに指板にダメージが蓄積されれば音詰まり等のトラブルが発生し、いずれは指板を研磨することによる指板修正が必要になります。
ただ、それはフレットのすり合わせと同じことですし、実際のところフラット弦を張っていようが指板に弦の跡はつきます。
指板保護の観点からすれば、ジャコのように指板を樹脂でコーティングするのが有効でしょう。

あるいは、気休め程度かもしれませんが、Elixirをはじめとするコーティング弦を使えば、わずかながら指板へのダメージを抑えられるかもしれません(いやさすがに変わらないか)。

フラット弦の中ではThomasticのフラットワウンドや、LA BELLAのLow Tension Flexible Flatsは比較的テンションが柔らかく、ラウンド弦に近い感覚で使えます。
その他にも、巻線にナイロン製のテープを採用したフラットワウンド弦の一種、ブラックナイロンやホワイトナイロンと呼ばれるナイロンワウンド弦であれば、指板へのダメージは抑えられると思います。

ただ、やはり楽器の弦は音色や演奏性を決める重要なファクターです。
「フレットレスだから〇〇の方がいい」という前提はいったん忘れて、色々試した上で自分にとって一番良いものを探すのがベストかと思います。

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