ド田舎のV系シーンを震撼させた東京のバンドの話

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機会があればインターネット上に放流しよう、と前々から思っていた話があったので、エイプリルフールにかこつけて公開してみます。
私自身ではなく私の友人が体験した話であり、あくまでも読み物としてお読みいただければ幸いです。
(※登場するバンド名は全て仮名です。)

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ローカルV系ロックシーン

ヴィジュアル系ロックのブームにはかなり波があり、興味のない人からすれば「まだビジュアル系って存在するの?」と言われるぐらいの壊滅状態だった時代もありました。
しかし、そんな下火だった時期も、都市部のみならず各地方でV系の火種は絶えることはなく、地元密着型のバンドやV系に特化したライブハウスによってその文化は守られ続けました。
現在でも、地域に根差したV系ロックシーンのようなものが全国各地に点在します。

私の高校時代の友人、仮にA君としますが、彼も地方のV系シーンで活動していたバンドマンのひとりです。
A君は2000年代中盤、某県の大学に進学し、そこで念願の本格的なV系バンドを結成しました。
その県は結構な田舎で、一般的にはV系のイメージなどない地域ですが、それでもV系に強いライブハウスや、そこを拠点とするV系ロックシーンが存在していたのです。

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地域の大御所バンドという存在

A君のバンド「マゾヒズム」は、メンバーのほとんどが学生だったものの、近隣県を中心に精力的にライブ活動を行い、時折東京や大阪にも遠征していました。
そして、地方のV系シーンでは一目置かれるまでになりました。
固定ファンもつくようになり、追っかけのバンギャもいたようです。

しかし、そんな彼らも頭が上がらない地元バンドが存在しました。
県内V系シーンのボス的存在だったバンド「PSYCHEDELIA」です。
10年以上活動を続けていたベテランで、強固なファン基盤を築いていることもあり、近隣で行われるV系の対バンライブでは必ずトリを務めるほどでした。

知らないバンドが東京からやって来る

さて、少し経って2010年代も近づいてきたある日のこと。
東京の新進気鋭のバンドが、全国ツアーの一環としてA君たちが活動する地方にもやってくることになり、ライブイベントに彼らの出演が組み込まれました。
A君を始めとしたマゾヒズムのメンバーは多くが就職し、バンド活動も停滞気味で「そろそろ解散かな」といっていた時期でしたが、彼らにも声がかかり、そのライブに出ることになりました。

その東京のバンドは「ギャラクシーファイヤー」という名前で、こういったおふざけ感のあるV系バンドは当時既に珍しくありませんでしたが、PSYCHEDELIAをはじめとした地元のバンドはダークな雰囲気の王道V系バンドばかり。
PSYCHEDELIAのメンバーは「東京のバンドってだけで名前も聞いたことねえな、どんな音楽やってんだか知らねえが現実を見せつけてやろうぜ」と不敵な笑みを浮かべていました。
まあこれは別に彼らが悪だくみをしていたわけではなく、その地域のバンギャは都市部から来たバンドに厳しくて、よっぽど良いパフォーマンスをしなければライブが盛り上がらない場合が多かったのです。

後に花開く才能の目撃者

さて、そんなこんなでライブ当日。
出演するのは5バンドで、出演順は地元の若手バンド2組に始まり、続く3番手がA君のマゾヒズム。
東京のギャラクシーファイヤーはトリ前の4番手で、もちろん大トリはPSYCHEDELIAです。

リハーサルはいわゆる逆リハで、出演順が最後になるPSYCHEDELIAからリハーサルが始まりました。
その次が4番手のギャラクシーファイヤー、そして3番手のマゾヒズム…という、ライブ本番とは逆の順番でリハが進みます。

リハは1バンド大体30分ぐらいはかかるので、A君たちマゾヒズムのメンバーは、PSYCHEDELIAがリハを終えて片付けを始めたタイミングで軽く食事に出かけることにしました。
ところが、「30分以内には戻れるだろう」と近くのファストフード店に入ったとき、後輩バンドのメンバーから電話がかかってきました。
「すぐ戻ってください!ギャラクシーファイヤーのリハ3分で終わりました!」

Aたちは「そんなバカな!」と思いながらも急いでライブハウスに戻りました。
バンドのライブのリハーサルというものは、各楽器のセッティングを行い、ステージ上で演奏者が聴く「中音」とスピーカーから客席に届く「外音」を調整し、バランスを見るために一曲演奏して…という作業なので、3分で終わるわけがありません。
しかし、なんとギャラクシーファイヤーはボーカルが歌っているだけで楽器メンバーは一切演奏せず、曲はiPodから流すという「エアバンド」だったのです。

そしてライブ本番。
前述のとおり、この地域のV系ファンはよそ者バンドに厳しいのですが、ステージに立ったギャラクシーファイヤーは一瞬で観客の心を掴んでしまいました。
当て振り、モノマネ、寸劇と、常識外れではあるものの、とにかく見せ方が上手いうえに曲の完成度も高く、かと思えば意図的にチープに仕上げたような曲もあり、30分程度のパフォーマンスで鮮烈な印象を残したのです。

逆にその後、大トリとしてステージに立ったPSYCHEDELIAは散々でした。
実のところ、彼らは「地域のトップに君臨するバンド」というよりただの「お山の大将」。
地元にこだわって活動していたわけでもなく、彼らは楽曲・演奏力・ルックスの全ての面で都会では通用しなかったのです。

そして、この日のライブに来たバンギャの皆さんは、ギャラクシーファイヤーの「本物のステージング」に完全にあてられてしまい、いつも応援している大トリバンドのステージには目もくれず、移動があるからと足早に会場を後にしたギャラクシーファイヤーに皆ついて行ってしまったのでした。
結果として、田舎の閉鎖的なシーンで偉そうにしていたバンドは完全に噛ませ犬状態。
誰もまともに聴いてくれない状況で演奏する羽目になりました。

この話を私にしてくれたあと、A君はこう語りました。
「正直『そんなのありかよ!』とは思ったし悔しかった。でも、観客を一瞬で惹き込むパフォーマンス力は間違いなくヤバかったし、確実にこいつらは来ると思った。まさかあんなに早く話題になって、紅白にまで出るとは思わなかったけどね。」

確かに、王道のV系ロックを信奉する向きからは邪道と言われても仕方なかったかもしれません。
しかし、もはやそんな言いがかりをつける人もいないでしょう。
彼らの現在にまで至る活躍が、その戦略の正しさを証明していると言っていいと思います。

A君は既にバンド活動から身を引いていますが、ギャラクシーファイヤーの爽快なまでの持って行きっぷりにはスカッとしたそうで、現在はいちファンとして彼らを応援しているとのことです。
くどいようですがフィクションということでお願いします。


もう紅白に出してくれない

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