全ての弦を試したわけでは当然ありませんが、基本的にロングスケール用の弦はショートスケールの短いベースに張れません。
という話をすると、「いや、短い弦をロングスケールのベースに張ろうとしたら長さが足りないのは分かるけど、長い弦は短いベースに張れるんじゃないの?」と聞かれることがあります。
意外とこのへんの話がネット上にまとまっていなかったので、ショートスケールのベースを入手したこの機会に記録を残しておくとともに、自分用のメモとして改造による解決方法も検討したいと思います。
ショートスケールの弦はロングスケールのベースに張れない
まず先に、「ショートスケール(30インチ)用の弦はロングスケール(34インチ)の楽器に張れない」という話をしておきます。
この「張れない」というのは、「ペグポストまで長さが届かない」ということではなく、ベース弦の構造が原因です。
ベースの低音弦は非常に太いので、ペグポストに挿し込んで巻き付けるために、ナットからペグに向かう途中で細くなります。
(※写真のベースは実際には35インチである点ご容赦ください)
ショートスケール用の弦はこの太い部分が30インチ強しかないわけですから、長いスケールのベースに張ろうとすると、太い部分がナットまで届きません。
この段差のせいで弦の太い部分が指板にベタッと接してしえば、音が鳴らせないという事態にもなりえます。
このように、ショートスケール用の弦がロングスケールのベースに張れないのは、「弦の太い部分の長さが足りない」という理由によるものです。
ロングスケールの弦がショートスケールのベースに張れない理由
では、その逆の「長い弦をショートスケールのベースに張る」ことの何が問題なのか?
先日入手した30インチの5弦ベース、IbanezのTMB35で見てみましょう。

ロングスケール用の弦は、低音弦の太い部分がそのままペグのところまで来てしまうことが問題になります。
ペグの仕様によって異なる部分もあるでしょうが、E弦やローB弦の太い部分はそもそもペグポストのスリットに入らないことが多く、弦をペグに巻き付ける事すらできないのです。
当然ながら、弦をペグの部分で固定し、巻き上げてチューニングすることなど一切不可能です。
長い弦を張るための改造案を考える
弦をペグではなくネジで固定するヘッドレスの楽器であれば、ショートスケールであってもロングスケール用の弦を使うことができます。
また、ペグがある一般的なエレキベースでも、低音弦のペグがナットから遠くに配置されてさえいれば問題なくロングスケールの弦が張れるはずなので、「汎用の弦が使えるようにリバースヘッドにしといてくれよ」というのが正直な感想です。
ともあれ、せっかく買ったTMB35に入手しやすい弦やお気に入りの弦を張って運用したいので、ロングスケールの弦を張れるようにする解決方法を考えましょう。
ロングスケール(34インチ)とショートスケール(30インチ)の差は4インチ、10.16cmあります。
イメージとしては、
・ボールエンドをブリッジから引っ張り出した状態で固定する
・ペグの位置をヘッド先端に向かって移設する
これらのいずれかの方法、あるいは両方を併用することによって、10cm強というスケールの差を吸収することを目指すわけです。
(ペグを加工するのは金属加工の難易度的に個人では難しいので無し。)
以下、楽器本体への改造が少なく済む順に、ショートスケールのベースにロングスケールの弦を張る方法の案を列挙していきます。
1.弦をほどく(楽器自体の改造は不要)
これは個人的に一発で断念したやつですが一応書いておきます。
Twitter等で実際にやっている人も見かけるのですが、弦を張り替える度に弦の太い部分をほどくのはかなり面倒ですし、作業時は怪我をしないように手や目の保護が必須かと思います。
とはいえ、楽器本体に一切改造を加える必要がないというのはメリットでしょう。
2.ボールエンドの位置をずらす
ここからは「ボールエンドの位置をヘッド側からさらに遠ざける」という方向の解決策です。
2-1.アルミパイプ等に弦を通す(改造不要)
細い金属パイプを介して弦をブリッジに通すことで、長い弦をショートスケールのベースに張ることができます。
そのような素材を所持していないので、実際にやったらどうなるのか、ストローに通して試してみました。
うん、こんなもんがブリッジから10cmも伸びてたら嫌ですね。
2~3cm程度ならともかく、ここまではみ出してしまっては、床に置いて壁に立てかける等も一切できなくなってしまいます。
2-2.弦に疑似ボールエンドを作る(楽器本体の改造は不要)
これはTwitterで教えてもらったアイデアです。
「弦の長さをボールエンド側から詰めることができれば、理屈の上ではロングスケール用の弦を好きな長さに短くすることが可能」という考え方です。
金属製の巻弦を固定できそうなものとして、ワイヤーロープの輪っかを固定するためのカシメがあります。
uxcell ワイヤーロープクリップ 304ステンレススチール 2mmワイヤーロープ シルバートーン 10個入り
ニッサチェイン 真鍮サーキュラスリーブ ワイヤーロープ径2.0mm用 1個入 P-977
ただ私の性格上、本来の用途と違う使い方をするのに不安があり、「だ、大丈夫かな?」とびくびくしながら演奏するはめになりそうなので、ちょっとこれはやめておくことにしました。
※もし試す場合は本当に自己責任でお願いします。何かあっても一切責任は負えません。
2-3.裏通しによりブリッジサドル~ボールエンド間の距離を伸ばす
弦をボディの裏から通す「裏通し」の楽器には個人的にあまり良い印象がないのですが、ブリッジから離れた位置に穴を開けて裏通しにすれば、ある程度はボールエンドをサドルから遠ざけることが可能でしょう。
ただ、ボディエンドギリギリの赤丸のあたりに穴を開けたとしても、最大でプラス5cm程度にしかなりません。
(まあミディアムスケールの弦は張れるようになるかも)
2-4.テイルピースから弦を張ることでボールエンド-サドル間の距離を伸ばす
WarwickのベースやHipshotのD Styleのような、サドル部分とテイルピースが分離したブリッジであれば、テイルピースの配置によってボールエンドを遠ざけることができます。
ただ、この方法で吸収できる長さは3cm程度にしかなりません。
あ、今書いてて「ボディ裏にテイルピースを設置してそこから弦を張る」というとんでもなく不細工な方法を思いつきました。
作業が楽という点では完全に一位なので、これ実際にやるかもしれないです。
【※後日談】結局実際にはやりませんでした↓

3.ペグの位置を変える
先に書いた通り、最初からリバースヘッドにしてくれていたら、ベース自体がショートスケールであってもロングスケールの弦が問題なく張れるはずです。
そこから着想を得て、この2:3のペグ配列のヘッドでどうにかB弦のペグを遠ざけられないかを考えます。
ここで思い出したのが、FoderaのExtended Bです。
HipshotのUltraliteのような、ハウジング部分が小さいペグと交換すれば、配置の面でも特に問題なく似たようなことができるのではないかと思います。
要はこういうこと↓です(※ペイントを駆使した雑コラ)。
B弦のペグが一番遠くなるように配置し、弦は反対巻きにします。
このB弦のペグには高音弦側のペグを天地逆にして使うことで、B弦とE弦でペグを回す向きが変わってしまう心配もありません。
ただ、最初はいいアイデアだと思ったんですが、これを綺麗にやるのは素人工作では難易度が高すぎることに加え、これだと結局E弦はナットからペグが近すぎて太い弦が張れないままになりそうなので、今回は却下です。
今後の方針
というわけで途中で思いついてしまったバカな方法(ボディ裏にテイルピース設置)を実行に移すためのプランを現在検討中です。
進展があればまた書きます。
【TMB35の改造記録はこちらから】
→タグ:TMB35
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