【IYV備忘録2】Inyen Vinaのこれまでと現在、Tanatosや代理店の話など

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ベトナムに工場を構える楽器製造メーカー、Inyen Vina(IYV)ですが、先日Twitterを眺めていると、その国内代理店であったPenguin Custom Guitar Research(PCGR)が業務を停止するというツイートが流れてきました。
採算が取れない状況になってしまっていたようです。
個人的に色々と思うところもあり、今回は私が知る限りの過去の出来事について、インターネット上の記録としてざっくり書き残しておこうと思います。

私とInyen Vinaの関わりについては過去にこのブログで書きました。

【IYV備忘録1】Inyen Vinaとの出会い、オーダー関係のあれこれ
このブログの趣旨からは外れるのですが、Inyen Vina(電話で聞いた発音だと「イニェーン・ヴィーナ」が近い。略称IYV)という楽器メーカーをご存じでしょうか。 多弦やファンドフレット等、マニアックな仕様のギター・ベースが好きな方なら以...

今回は、ここで詳しく触れなかった全体的な話をまとめておきます。
※改めて申し上げておきますが、私はIYV、Tanatos、PCGRのいずれとも関係のない、一人の素人ベーシストです。

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Tanatosが登場した当時の話

IYVは、1994年に設立された韓国資本の楽器メーカーで、ベトナムに工場を構えています。
自社ブランドの楽器の製造よりも、他のメーカーの委託を受けて楽器を製造するOEM製造メーカーとして稼働しており、日本の楽器ブランドTanatosの製造元でもありました。
このTanatosは2011年に突如登場し、当時はまだまだ珍しかった7弦ベースや、32フレットのギター(スカイギターと同じく音域は37フレット相当!)といったマニアックなラインナップで話題になりました。

当初、Tanatos製品はCOMBAT GUITARSが最終調整と代理店業務を担当しており、多くの楽器店の店頭に並んでいました。
今でこそIbanezやTUNEといったメジャーなメーカーが7弦以上の超多弦ベースを販売していますが、日本国内で超多弦ベースの認知度を高めたのがTanatosであることは間違いないでしょう。

一番最初の7弦ベースだったKFB7-120シリーズは、税抜き12万円という販売価格。
7弦ベースの選択肢など海外メーカーのConklinぐらいしかなかった当時、超多弦ベースに関心を持っていたベーシストの多くがTanatosのベースを購入していました。

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Tanatosの販路縮小から楽器事業撤退まで

ただ、全国規模でお店に商品を置いてもらうのは大変なことです。
流通や、不具合への保証対応にかかるコスト、販売店の取り分、さらに為替相場の変動という不確定要素まで考えると、海外製造品の販売や輸入代理店業務なんてものはよっぽど利益率が高い商品を取り扱うのでないと全然儲からないというのが実情だと思います。

実際Tanatosも、しばらく経った時期に「円安による利益の圧迫が大きかった」と公表。
値上げすることなく中間マージンをカットするため、COMBATとの関係を解消し、楽器店への流通を取りやめました。
「Tanatosってすぐに無くなったよね」と思っていた人も多いかもしれませんが、獲得した知名度を活かし、「商品のアナウンスをfacebookで行い、ユーザーに直接販売する」というビジネスモデルに移行していたのです。

そのTanatosが再度大きな話題になったのが2016年。
このとき発売されたのが、CL-98という7弦ベースと、CL8-180という8弦ベース、そしてCL10-200という10弦ベース!
このときも楽器店には並ばず、Amazonマーケットプレイスでの販売でした。

定価はそれぞれ型番のとおりの値段だったものの、大幅な値引きと大量のAmazonポイント還元により、実質販売価格は7弦ベースが77,000円、8弦ベースが108,000円、そして10弦ベースが12万円という、超多弦ベースとしてはかなりの破格でした。
既に検索結果には出てきませんが、この記事を書いている時点でそのときのAmazonの商品ページがまだ見られます

このとき販売されたモデルはかなりの注目を集め、一瞬で売り切れてしまいました。
しかし、1年後の2017年に実施したTanatos名義でのオーダーメイド受付を最後に楽器事業からは撤退されたようで、その後Tanatosブランドは実質消滅したようです。
(※Tanatosを運営していた企業の本業は実はIT系で、楽器の企画販売はサブ事業でした。現在はまた別の事業として蜂蜜酒を販売されています。)

Tanatos末期~IYVと出会って以降の話

この10弦ベースの発売と前後した2016年ごろ、私がTwitterでIYVへの直接オーダーを紹介し、一部で話題になったのは前の記事で書いたとおりです。

実はその少し後に、TanatosともPCGRともまったく別のあるところから「IYVを製造元とする楽器ブランドを展開したいので一緒にやらないか」と打診がありました。
しかし、私が当時書いていたブログ(閉鎖済)にTanatosの社長さんからいただいたコメントや、他のルートでも聞いていた色々な内情から、私がデザインした試作品を1本発注した時点で私はこの話を断りました。
一言でいうと「こんなもん絶対儲からない、一歩間違えれば大赤字の借金だけ抱えて終わりだ」としか思えなかったのです。

先ほども書きましたが、楽器の代理店業務は大変です。
国内で正規に流通している海外ブランドの楽器には、代理店の取り分だけでなく、保証期間内の無償修理を想定した金額なども上乗せされています。

極端な例ですが、仮に「製造元から直接個人輸入で購入したら100万円する楽器」があるとして、10万円を代理店が上乗せして110万円で売られていても、文句を言う人は少ないでしょう。
しかし、元値5万円の楽器だと、3万円の上乗せで8万円になっただけでも「ボッタクリだ!」と騒がれると思います。

これがまさに「安価な商品を取り扱うのでは利益が出しにくい」ということです。
大量に仕入れて薄利多売なら成立するでしょうが、特殊な仕様の楽器ではそうそう利益が出るとは思えません。
そのうえ、「複数のオーダーを同時進行で進捗管理しながら、レスポンスの悪い海外工場と連携をとり、顧客が要求するレベルの商品を安価に提供する」というビジネスモデルはかなり無理があると言わざるをえないでしょう。

代理店の現在

そんなわけで、2018年にPenguin Custom Guitar Researchが発足し、オーダー受付の窓口業務を開始した際は、「商売として上手くいけばいいな」と思いつつも、内心「大丈夫かな…?」と感じていました。
(※TanatosとこのPCGRの間にもまた一切の関係は無いそうです)
そして結果的に、ベトナムの工場火災等の不運もあったとはいえ、赤字状態になってしまったようです。

この記事を書いている現時点でも、IYVは個人からの直接オーダーを受け付けているようです。
やはり基本的に初心者にはおすすめできない代物であり、「自分でリペアできる人」あるいは「リペア費用を別途捻出できる人」向けのものと考えるべきでしょう。
「英語を母語としない人どうしが英語のメールでやり取りする」という難しさもあります。

とはいえ、現時点においても「安価にオーダーできるメーカー」としての地位はなかなか強固なものだと言えますので、それでも気になるという方はあくまでも自己責任でオーダーされてみてはと思います。

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