このブログのカテゴリー「ベーシスト紹介」では、エフェクターの使用に着目し、私が影響を受けたベーシストを「エフェクターベーシスト列伝」と称して紹介してきましたが、今回はちょっと脱線して番外編です。
私自身がデスメタルバンドでフレットレスベースを弾いていたこともあり、個人的なメモを兼ねて、主に現代のエクストリームメタルの分野でフレットレスベースを弾いているベーシストを紹介したいと思います。
デスメタルに興味がない方にも、フレットレスのアプローチのひとつとして参考になればと思います。
【※以下、アルバムタイトルのリンク先は基本的にAmazon、なければBandcamp】
- Steve Di Giorgio (DEATH, TESTAMENT etc.)
- Sean Malone (CYNIC etc.)
- Robin Zielhorst (ex-CYNIC, EXIVIOUS etc.)
- Andy Marchini (ex-SADIST)
- Dominic "Forest" Lapointe (FIRST FRAGMENT, AUGURY, ex-BEYOND CREATION etc.)
- Hugo Doyon-Karout (BEYOND CREATION, BROUGHT BY PAIN, EQUIPOISE etc.)
- Jeroen Paul Thesseling (OBSCURA, SADIST, ex-PESTILENCE etc.)
- Linus Klausenitzer (OBSIDIOUS, ALKALOID, ex-OBSCURA etc.)
- DisJorge (VIRULENCY)
- Carlos Venegas (ex-CORPSE GARDEN)
- Luis Mora (FRACTAL ENTROPY)
- 太輝 (DEVILOOF)
- Takanori Tomaru (STRAENGE)
- Patrick Leyn (PILE OF PRIESTS)
- Joe Lester (INTRONAUT)
- 【補足情報】まだまだあるぞ世界のフレットレスエクストリームメタル
Steve Di Giorgio (DEATH, TESTAMENT etc.)
まずこの人は外せない、スティーヴ・ディジョルジオ。
自身のバンドSADUSをはじめ多くのバンドで活躍、TESTAMENTでもベーシストを務め、2022年にはMEGADETHのレコーディング参加でも話題になりましたが、その強烈すぎる存在感が遺憾なく発揮されたのが伝説的デスメタルバンドであるDEATHでしょう。
中でも「Individual Thought Patterns (1993)」はベースの音がやたらとデカく、うねりまくる独特のベースラインが迫ってくる必聴盤です。
Sean Malone (CYNIC etc.)
私が大きな影響を受けたベーシストの一人がショーン・マローンです。
CYNICはプログレッシブデスメタルの歴史における超重要バンドと言えます。
こちらは1stアルバム「Focus (1993)」の冒頭を飾る名曲、唯一の来日となってしまった2015年のライブ映像から。
CYNICは1stアルバムリリース後に一度解散し、復活後はデスメタル要素が薄れていきますが、2ndの「Traced in Air (2008)」(※ベースを再録し、アダム“ノリー”ゲットグッドがミキシングを担当したリミックス盤「Traced in Air Remixed」も2019年にリリース)、3rdの「Kindly Bent to Free Us (2014)」
いずれも個人的に大好きな作品です。
あと外せないのが、Roadrunner Recordsの25周年記念プロジェクト、ROADRUNNER UNITEDのアルバム「The All-Star Sessions (2005)」に収録されたこちら。
TRIVIUMのマシュー・ヒーフィー(当時19歳!)がリーダーを務めたチームに招かれ、ブラックメタル曲「Dawn of a Golden Age」に参加しています。
この曲はボーカルがダニ・フィルス(CRADLE OF FILTH)、ドラムがマイク・スミス(SUFFOCATION)という、他ではありえないとんでもないメンバー編成が強烈な化学反応を起こしました。
なお2020年、CYNICのドラマーだったSean Reinertに続き、Sean Maloneまでもが50歳でこの世を去ってしまいました。RIP
2人のSeanの没後に制作されたアルバム「ASCENSION CODES(2021)」ではベースパートをキーボード奏者が担当し、ベーシスト不在の作品となりました。

Robin Zielhorst (ex-CYNIC, EXIVIOUS etc.)
ショーン不在時のCYNICを支えたオランダ人ベーシスト、ロビン・ジールホルストも紹介しておきたいと思います。
彼はテクニカルインストバンドEXIVIOUSのメンバーだったほか、NE OBLIVISCARISの「Urn (2017)」にサポートとして参加していました。
卓越したテクニックの持ち主なので、またデスメタルのシーンでも演奏してほしいですね。
Andy Marchini (ex-SADIST)
1990年代前半から活動するSADISTは、複雑怪奇な曲展開と、時に民族音楽をも想起させる独特のリズムアプローチが印象的なイタリアのバンド。
長年ベーシストであったアンディ・マルキーニは、近年の作品ではフレットレスベースをプレイすることも多く、「Hyaena (2015)」でそのサウンドを聴くことができます。
Dominic "Forest" Lapointe (FIRST FRAGMENT, AUGURY, ex-BEYOND CREATION etc.)
テクニカルデスメタルにおける超絶技巧のフレットレスベーシストといえば、カナダの名手ドミニク"フォレスト"ラポイントでしょう。
レフティの6弦を用いた流麗なテクニックをフル活用したBEYOND CREATIONの1stアルバム「The Aura (2012)」のインパクトは強烈でした。
AUGURYではフレッテッドのベースも使用していると思われますが、2ndアルバム「Fragmentary Evidence (2009)」ではフレットレスによる特徴的なフレーズを聴くことができます。
2016年から所属しているFIRST FRAGMENTでも弾きまくっており、「Gloire Éternelle (2021)」ではスラップも多く披露しながら、バリエーションに富んだリズムの海を変幻自在に飛び回っています。これは本当に必聴。
※YouTubeのプレイ動画等から一時期勘違いしていたのですが、FIRST FRAGMENTの1stアルバム「DASEIN(2016)」におけるベーシストはVincent Savaryで、Dominicの加入はレコーディング後です。
Vincentのプレイ動画や他バンドでの著名な活動は見当たらないため、当記事では彼の紹介は割愛しますが、「Gloire Éternelle」収録の長尺曲「In'el」にゲスト参加しています。
1:20~のベースソロは前半がForestで、後半1:58~がVincentのパートのようです。
Hugo Doyon-Karout (BEYOND CREATION, BROUGHT BY PAIN, EQUIPOISE etc.)
ドミニクの後任としてBEYOND CREATIONに加入したのがヒューゴ・ドイオン・カーラウトです。
一聴してそれと分かる癖の強いサウンドと確かなテクニックで、「Algorythm (2018)」のアンサンブルに彩りを与えました。
他にも、メンバーがほぼBEYOND CREATION関係者のBROUGHT BY PAINでは、EPとして「Crafted by Society (2016)」をリリース。
さらにEQUIPOISEにも参加し、1stアルバム「Demiurgus (2019)」がリリース。こちらも注目です。
Jeroen Paul Thesseling (OBSCURA, SADIST, ex-PESTILENCE etc.)
オランダ人ベーシストヨルン・パウル・テセリンは、プログレッシブデスメタルの最重要バンドの一角として名を馳せたPESTILENCEに断続的に在籍していました。
デスメタルとシンセサウンドを融合させた一つの結実例として名高い「Spheres (1993)」において、ヌルヌルしたベースサウンドが楽曲のジャンルレス感をさらに強めています。
そんな彼を一躍有名にしたのが、ドイツのテクニカルデスメタルバンドOBSCURAの出世作となった2ndアルバム「Cosmogenesis (2009)」でしょう。
このアルバムの冒頭を飾ったベースイントロは、ごく短いフレーズながら鮮烈な印象を残しました。
その後OBSCURAからは脱退するものの、2020年4月、まさかの再加入!
復帰作となる「A Valediction (2021)」では、共に2nd~3rd期を支えたギタリストのクリスチャン・ミュンツナーも再加入しており、前作までのモダンプログレメタル感が後退した初期寄りの作風になっています。
さらに、Jeroenは同じ2020年にSADISTにも加入。
もともとデスメタルというジャンルにありながらも休符を活かしたフレージングが特徴的でしたが、「Firescorched (2022)」ではさらに隙間を活用しつつ、変態デスメタルなギターリフに対抗しながらフレットレスならではの存在感を発揮しています。
Linus Klausenitzer (OBSIDIOUS, ALKALOID, ex-OBSCURA etc.)
2011年から2020年にかけてOBSCURAに在籍したベーシストがリーヌス・クラウゼニツァーです。
5thアルバム「Diluvium (2018)」では、複雑化した楽曲の隙間を縫うようなフレーズを構築。
OBSCURAを2014年に脱退した元メンバーが在籍するALKALOIDでもベースを弾いており、「Liquid Anatomy (2018)」はスピードよりも重厚感で聴かせるダークな音楽性となっています。
なお、2020年、リーダーであるシュテフェン・クンメラー(Vo,G)一人を残してOBSCURAを脱退したリーヌスら3名は、新バンドOBSIDIOUSを結成。
難解なリズムとストレートな突進力を兼ね備えたサウンドに、意表を突いたクリーンボーカルをも導入し、OBSCURAとはまた異なる音楽性を見せるアルバム「Iconic (2022)」をリリース。
さらに、多くのゲストを迎えてソロ名義のアルバム「Tulpa (2023)」もリリースするなど、精力的に活動しています。
DisJorge (VIRULENCY)
ブルータルデスメタルからは、スペインのVIRULENCYのベーシスト…名前の読みはディスジョージでいいのだろうか?
Jorgeという名前はスペイン語読みだと「ジョージ」ではなく「ホルヘ」のはずですが、きっとDISGORGE(ディスゴージ)が好きなんでしょう。
初のフルアルバム「The Anthropodermic Manuscript of Retribution (2016)」では、残虐リフの嵐の中をフレットレスがヌルヌルと動き回っています。
Carlos Venegas (ex-CORPSE GARDEN)
個人的にかなり好きだったバンド、コスタリカのCORPSE GARDEN。
そのベーシストだったのがカルロス・ヴェネガスなのですが、既に脱退し、後任のベーシストはどうやらフレットレスではないようです。
アルバム「Entheogen (2015)」は、現代的な攻撃性とオールドスクールな重苦しさを両立した作品でした。好きすぎてCDもTシャツも買いました。
Luis Mora (FRACTAL ENTROPY)
メキシコのFRACTAL ENTROPYのベーシストがルイス・モラです。
2ndアルバム「Transcendens (2016)」では、90年代っぽさを感じさせる荒々しさとテクニカルな音使いが同居した楽曲に、フレットレスベースが絶妙なアクセントを添えています。
太輝 (DEVILOOF)
国産V系デスコアバンドDEVIOOFのベーシスト、DAIKIもフレットレスを導入しています。
Steve Di Giorgioと同じThor Bassにオーダーした楽器を使っており、ギターの2人もオタキッシュ機材全開なのがポイント高いです。
日本独自の「Visual-Kei」のフィルターを通さないと出てこない多彩な音楽性を見せる音楽性を武器に、メジャーデビュー音源としてEP「DAMNED (2023)」をリリース。
本記事リライト時点での最新曲「Everything is all lies」でもその個性が爆発しており、個人的に次のフルアルバムが楽しみです。
Takanori Tomaru (STRAENGE)
国産変態スラッシュメタルバンド、STRAENGEのベーシストTakanori TomaruはB.C.Richの左利きフレットレスWidowベース(フレットライン無し)という一度見たら忘れられない楽器が印象的。
自分はスラッシュメタル方面に明るくなく、最近まで存じ上げなかったのですが、突進リフとVOIVODやVEKTORを彷彿とさせる複雑怪奇な展開が同居する楽曲は妙な中毒性があります。
初のフルアルバムとして「Filthy Microbus (2023)」をリリース。
Patrick Leyn (PILE OF PRIESTS)
PILE OF PRIESTSはアメリカのデスメタルバンド。そのベーシストを務めるのがパトリック・リーンです。
10年以上の活動歴があり、セルフタイトルの「Pile of Priests (2020)」はスラッシュメタルの影響を強く感じさせながらも時折モダンなリフワークが顔を覗かせる曲構成が魅力。
微妙にまとまりきっていない雰囲気も感じてしまうものの、時折コード弾きも交えて存在感を主張するベースを含め、ところどころにDEATH的な要素もありますね。
ちなみにAdamovicの6弦ベースを使っているようです。いいな。
Joe Lester (INTRONAUT)
デスメタルのカテゴリーではありませんが、現代エクストリームメタルの文脈にある重要バントとしてこちらをご紹介。
スラッジ的な要素もあるポストメタルバンドで、近作として「Fluid Existential Inversions (2020)」がリリースされています。
ベーシストのジョー・レスターは、時期によっては右利き用のベースを逆向きに構えて演奏していますが、そのような見た目の要素は抜きに、デスメタル方面のベーシストとはまた異なる骨太なサウンドでもって浮遊感の演出に一役買っています。
以上、現代メタルベーシストを手短に紹介するつもりだったのですが、思ったより長くなってしまいました。
この記事の末尾に自分のバンドの曲を貼るのが個人的な目標ですが、そっちは気長に頑張ろうと思います。
【他のベーシスト紹介記事はこちらから】
→カテゴリー:ベーシスト紹介
【デスメタルがお好きな方はこちらもどうぞ↓】

【補足情報】まだまだあるぞ世界のフレットレスエクストリームメタル
世界は広いというか、メインでフレットレスを使っているわけではないベーシストや、個人単位で大々的に名前を出して活動しているわけではないフレットレス巧者のベーシストもたくさんいます。
そういったベーシストが一時的に在籍することで「一時期だけフレットレスデスメタルだったバンド」というのもあります。
そういうものも含めるとなかなか情報も集めにくいですが、今時上手い人は本当にそこら中におり、まだまだたくさんのフレットレスデスメタル/エクストリームメタルが存在します。
その流れで紹介したいのが、EXISTの他、2020年からはMALIGNANCYにも所属しているAlex Weberです。
リズム隊メンバーが不参加となった2022年のOBSCURAの北米ツアーで、サポートとして帯同したのが彼です。
(ちなみにサポートドラマーのGabe SeeberはTHE KENNEDY VEILの他、DECREPIT BIRTHのライブ等でもドラムを叩いている人。)
デスメタルに限らずですが、昨今のテクニカルベーシストはコンパクトな動きで音数を増やすのにロータリースラップ的な動きを活用することが珍しくなく、ルートを弾く際には親指のアップダウンも用います。
アレックスもその系譜にある奏法が特徴的で、OBSCURA本来のサウンドと比較すると、彼の演奏は「モダンメタル的な音色・プレイスタイルでフレットレスを演奏するとこうなる」という好例です。
普段あまりデスメタルを聴かない人ほど「こういう手法があるのか!」という驚きがあるかもしれません(↓これに関してはちょっと演奏が荒い気がしますが…)。
余談ですが、彼が弾いているベース、なんと自作品だそうです。
世界のフレットレスデスメタル、という流れでいうと、中国のDEATHPACTもベースがフレットレス。
複雑な楽曲構成とゴリ押し気質の突進力がせめぎ合うデスメタルバンドです。
ベーシストの常旭は以前はIbenezのベースを使っていたと思うのですが、最近はLe Fayのヘッドレス6弦フレットレスを使用しているようです。
こちらはイタリアのCOEXISTENCE、ベースはChristian Luconi。
全員ヘッドレスなのいいな。
CHILIASMのポーランド人ベーシスト、Szymon Miłosz。
Michael Sandersによるベースソロも登場するTÓMARÚM、これは分類としてはアトモスフェリックブラックメタルに近いものでしょうか。
かっちりしたテクデスとはまた異なる魅力があるデスメタル、HORRENDOUSのAlex Kulick。
SPECTRUM OF DELUSIONやHYPERCONVOLUTORでベースを弾いているJerry Kamerなんかは技術に比して知名度が低いと感じるベーシストの一人です。
他方、海外のフォーラムで「フレットレスのデスメタルだぜ!」と紹介されていても、ちょっと判別がつかないものもあったりします。
例えばJoel Schwallierが在籍していた時期のINFERI、フレットレスでのプレイスルー動画も上がっているのですが、音源を実際にフレットレスでレコーディングしているのかはいまいち確証が持てません。
VOIDCEREMONYのThe Great Righteous Destroyer(名前)、これ↓なんかはフレットレスっぽいですが、全曲フレットレスか?というとちょっと分からないです。
VERVUMなんかもその手の話題でよく挙げられていますが、これは「フレットレスっぽく聞こえなくもないけど違うでしょ」と思います。
Arran McSporran本人によるプレイスルーもフレッテッドです。
ArranはVIPASSIでは実際にフレットレスを弾いているんですが、これはテクデスっぽいインストゥルメンタルなんだよな…
とまあこんな感じで探せばキリがなく、この記事は今後も適宜更新する予定です。
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